オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

<side 佐々>

「帰ったってどぉいうコトだよ!!」

「伊都に遅らせるって言ったの!…でも、言ったんだけど、花美ちゃん、“イイっ”って、“絶対に嫌だ”って聞かなくて……」

「それでも呼べよっ!ひとりで帰すなよ!」


昼間、あんなことあったばっかなんだぞっ、

それに、さっきだって……

ベッドに横たわってた花美が脳裏に浮かぶ。


冗談じゃないっ!

車で送らせたから大丈夫だとか、そおいうんじゃねぇ!


「どうしよう……大丈夫かしら……」


いまさらだけど、さすがに母さんは心配そうだ。

それに比べて…

オレは父さんをにらむ。


「呼んだらさ、お前、彼女のこと送って行くって聞かないだろ。嫌だったんじゃぁないの?」


リビングのソファーに深々と腰掛けて、父さんが書類から目も離さず言った。

いつもより、表情が硬い。

なんなんだ?

何が気にいらねんだよ!!

面倒起こしたことについては、さっき話はついたろっ!!


「あいつの意見なんか関係ねんだよっ」

「あの子はダメだぞ。伊都」

「……?」


想像だにしてなかった返事に耳を疑った。


――なにが、“ダメ”なんだ?


理解できなくて、呆然と突っ立っていたんだろう。

父さんが、書類から目をはずすとオレのほうに向き直る。

それが、まるでスローモーションみたいに現実感がない。


「お前が、どこのオンナと遊ぼうが、惚れようが構わないさ」

「……」

「…でも、あの子はダメだ。伊都っ」

「…なに勝手なコト……」

「彰人さんっ!」


オレが言うより早く母さんが叫んだ。

すぐ脇にいるはずなのに、母さんの声がやけに遠くに聞こえる。


「月乃さん……」

「イヤよっ!!」

「……」


あまりの展開に言葉が出ない。

うちの両親が言い争いしてるって、…ウソだろ?

ケンカするトコなんて、見たことなんかない。

冗談抜きで、マジで1回だってないんだ。

それが、なんで花美のことで、母さんがそんな怒ってんだよ。


――ワケわかんねぇ……


普段、話のわかる父さんが、こんなこと言うこと自体、信じらんねぇのに……

大体どっちかってぇと、“真面目に付き合え”だの、“一緒にいたオンナは下品だ”だの、

いつもダメ出しすんのは母さんのほうだろ?


「月乃さん、後でちゃんと話を……」

「何を話すっての?…わかってないのは、彰人さんのほうでしょ!伊都ォ!!」

「…!?…な、何だよ……」

「お前、今すぐ花美ちゃんのトコ、行ってやんなっ!!」


どおなってんだ!?


「自分の部屋に戻ってろっ。伊都っ!」


間髪いれずに響いた父さんの大声に、目が覚めた。

そのまま、にらみ返す。

怒りに、ようやく感覚が戻ってくる。


「伊都!!」

「勝手にやってろっ!!」


オレは花美んトコに行く。

リビングを出ると、その足で玄関に向かった。