オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

医務室に戻ると、花美はまだ眠ったままだった。

医務室と言っても自宅に在るヤツだから、ベッドと簡単な診察に必要なものが置いてある程度のもんだけど、

プライベートで父さんに診てもらいたいと来る人用で、古くから付き合いのある地元の人間も多い。

一応、循環器ではそれなりに名医とからしい。

まあつまり、そこそこの年齢だ。

たしか、母さんが高校卒業してすぐに結婚したはずだから、15歳くらい離れてたはず。

まったく、何やってんだよ……父さん。

人のコト言えねぇだろ。

いまなら絶対に捕まってんな。


音を立てないように近づき、そっとベッドサイドから覗き込むと、

スヤスヤと気持ちよさそうに花美が眠ってた。

ほっと、息をつく。

さっきより大分顔色がいい。

逆に、付き添いの母さんのほうが、よほど顔色が悪い。


「オレがついてるから、あっち行けよ」


そう言うと、今度は母さんが、”あんたの何なの?“と、父さんと全く同じコトを聞いてきた。


「関係ねぇだろ!?早く行けよっ!」

「伊都っ、ちゃんと答えてっ」


花美を起さないように気を使っているのか、声を押し殺しながら凄む。

めんどくせぇなぁ……

無視しようとしたんだけど、今日に限って、やけに母さんが引かない。

勘弁してくれ……

オレだって、相当まいってる。


「伊都!!」


くそっ!

いら立ちを含ませた母さんの声に限界を感じ、思わず怒鳴り声を上げそうになった瞬間だった。


「…ささ…くん……?」

「「!!」」


母さんとオレが、同時に声のした方へ向き直る。

ベットに横になったまま、ぼんやりと花美がこっちを見ていた。