オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

<side 佐々>

「ま、大丈夫だろ」


それまで花美の様子を見ていた父さんは、そう一言いうと、ベッドサイドの椅子に腰を掛ける。

マジかよ。

全然、大丈夫そうじゃねぇじゃん。

ベッドに横になってる花美はピクリとも動かない。

肌は白いどころか、皮下の静脈を透かして青白い。

まあ、医者の父さんが言うんだから間違いないんだろうけど。


「…伊都」

「……」

「伊都っ!」

「…あ、ああ?なんだよ」

「月乃(つきの)さん呼んでおいで」

「…母さん?なんで」

「いいから」


いい年して、うちの両親は名前で呼び合う。


「彰都(あきと)さん」


呼びに行くまでもなく、母さんが部屋に入ってきた。

母さんも、まだ顔色が悪い。

花美が倒れこんだときの、母さんの動揺はハンパなかった。


「よく眠ってるだけだから心配ないよ。まあ、軽い貧血もあるみたいだから薬は出しておこう」


母さんとオレから、そろって安堵のため息が漏れた。


「汗をかいてたみたいだから、着替えを持ってきたの。風邪ひくといけないでしょ?」

「ああ、ありがとう…って、ピンク?」


父さんの驚いた声に、母さんが、クスリ…と笑う。


「彰人さんの着替えじゃないわよ~、花美ちゃんの」


そう言いながら、母さんが花美のベッド脇に着替えを置くのを見て、

今度は父さんが、安心したようにため息をついた。


“花美ちゃんが目を覚ましたら、着替えさせるから”


そう母さんが言うと、オレと父さんは反論するまもなく部屋を追い出された。

直後、今度はオレが父さんに連行される。

まあ、何を言われるかは大体予想がついている。


「大体の事情は成久くんから聞いてるよ」


書斎の椅子に脱いだ白衣をかけながら、父さんがオレを見てニヤリと笑った。