オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

なんで、佐々くんのお母さんが私を引き止めるの!?

わけわかんない。

…っと、その時、


ひゅゥ…


いきなり喉が不自然に鳴った。


――あ、まずい……


体中の力が抜けていくのがわかる。

あっという間に、目の前が真っ暗になった。


「…っ!花美っ!!」



暗闇の中、まぶたに焼き付いて離れない光景が映画のように浮かび上がる。


“あれ?ママ、なんで泣いてるの?”


まだ、子どもの私はパパに聞く。


“あれ?パパは?”


辺りを見渡すと、足元の畳に血が数滴ポタポタと落ちてる。

キレイに整えられた和室。

障子の隙間から見える、手の行き届いた和風の庭。

遠くで、大人の人たちの大声が聞こえてる。


ママの悲しそうな顔が、さっきのお母サマと重なる。


「花美っ!!」


意識を手放す瞬間、誰かに抱きしめられた気がした。

力強い腕が、かすかに震えてる。

少し苦しいけど……

でも、伝わってくる体温が心地よくて、

安心できて、

スウ……

自然と空気が肺を満たした。

甘い、でも少しスパイス―なコロンのにおい……


――なんて名前のコロンなんだろ……


聞こうと思ってて、ずっとタイミング逃してたんだぁ…


この香りスキ……

大スキ……

佐々くんの…

におい。