オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

佐々くんのお母サマの登場で、意識の外に追いやられてたけど、

いつの間にか、カラダが全然いうことを聞かない。

それでも、倒れてしまわないように、足を踏ん張った。

変えるべき道を見据える。


早く、ここから出て行かなくちゃ。

やっぱり、こういう家は苦手。

息がつまって、空気がうまく吸えない。


『ハッ…ハ…ッ、ハッ…』


――あれ?


なんだろう。

なぜか、耳の奥で、自分の呼吸する音が聞こえる。

走った直後のみたい、荒くて、酷く苦しげな音。

夏の夕暮れ特有の生暖かい空気が、体に張り付く感じが、やけに気になる。

動かないカラダ。

消え始めたセミの声。


――まるで、あの日みたい……


そう思ったけど、


――あの日?…


あの日ってなに?

あの日が思い出せない。

目の前が、どんどん薄暗くなっていく。

思い出さないように……


グイッ!!


突然、勢いよく右手が引かれた。

その衝撃で、一瞬だけ意識が回復する。

捕まれた右手が熱い。

力も強くて、痛いくらい。

だから、この場から勝手に逃げようとしたことを、“怒ってるんだろうな…”って思った。

怖いなぁ…

って、そう思うのに、

なのになんで、振り向かずにはいられないんだろう。


「待てってっ!!」


思ったとおり。

眉間にしわを数本寄せて、射抜くように私を見てる……


「…ささ…くん」


…と、

――え?


「お…お母サマぁ?」


…が、私の手をしっかりと握り締めていた。


――な…なんでぇ……?