オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

だって、佐々くん……が、

ものすごく辛そうな顔してる……


「違うんです!わたしが…その、絡まれてて危なかったところを、助けてもらったんです!」

「花美…?」


佐々くんってば、なんでちゃんと言わないの?

口では“ババア”とかひどいこと言ってるけど、本当はお母サマのコト悲しませて悪かったって、思ってるくせに。

だって、そうじゃなかったら、そんな悲しい顔するはずない。

しょうがないヒトだなぁ…って、

でも、ああ、よかった……って思った。

佐々くんは、やっぱり優しい人だ。


「私のせいなんです。佐々くんは悪くないです。」

「違うって!…オレが勝手にキレて……」

「ごめんなさい!」


そう、頭を下げようとした直後だった。


「…え……?…うそ…」


お母サマの声がした。

さっきまでとは明らかに違う、思わず出てしまったという声色。

私がここにいること自体、初めて気がついたみたいで、

お母サマが、ものすごく驚いた様子で、わたしのコトをじっと見つめてる。


「…ぁ、…あの……だから」

「……」

「佐々くんのコト…怒んないで……くだ…さい…」


返事はない。

お母様は、ただ私を見つめたまま微動だにしない。

なんだか、佐々くんに見つめられてるみたいで、変な感じ。

でも、とにかく、

できるだけ丁寧に、

ココロをこめて、深々とお辞儀をした。


「その……本当に…申し訳ありませんでした」


――ごめんなさい。

――本当に、ごめんなさい。


「し…失礼します」


顔を上げて、今来た方向を戻ろうと振り返った瞬間だった。


――あ…れ?


グラリ……


目の前の景色が歪んだ。