オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

緊迫する空気をよそに、私は不謹慎にも感動してた。

目の前の二人は、さすが親子、よく似てる。

その整いすぎた綺麗な顔同士が、外灯の下でスポットライトを受けるように、無言でにらみ合ってるんだよ?

怖あぁい……ケド…

洋画のワンシーンみたい、すごくキレイ。


――佐々くんって、お母サマ似だったんだぁ…


また1つ、佐々くんのことが知れて、うれしくなる。

ぼんやりと、何分見とれてたんだろう。

口火を切ったのは、お母サマのほうだった。


「あんた…今度、暴力事件起こしたら、次はないって言ってあったわよねぇ?」

「事件だぁ?なっちゃいねえだろ、あの程度」

「……」


――なんて、ヤクザな会話……


でも、暴力って……

もしかして、さっきの事なんだろうか?

どおしよう、私のせいだ……と、その時、


グイッ!!


お母サマが、佐々くんの制服のネクタイをつかんで引き寄せた。

身長差15センチ足らず。

お母サマを見下ろしていた佐々くんの顔が、ほんの数センチ差で並ぶ。

恋人ならキスしそうな距離。

実際、ちょっと年の差カップルでも通用しそうなくらいお母サマは若くてキレイ。

だから、なんか……


なんかちょっとだけ、ドキッとした。


「警察沙汰に、なるかならなねえかって問題じゃぁねえっ!!…て言ってんダヨ!!このバカ息子!」

「っせぇなあ!!放せよババァ!!」


――……ひゃぁああっ!!


ば…ババアって……

女子大生でも全っ然通じるくらいだよ!?

それに、お母さんにそんなこと言っちゃダメだよ!佐々くん!!


壮絶な怒鳴り声の応酬が、夏の穏やかな夕闇に響き渡る。

それが数分続き、そして突然終わりを告げると、

パタリ……

佐々くんのネクタイをつかんでいたお母様の手が、力なく落ちて、

ポツリ……

心細そうにつぶやいた。


「あんたにぶっ飛ばされた子達は、今、彰都(あきと)さんの病院で診てもらってるわ……」

「……知るかよ」

「なんでなのよ、あんた…人様に手ぇあげたってことが、問題だってのが、本当に分かんないの……?」


その時の、悲しげなお母サマの顔……


――あ……っ


「あ、あのっ…ごめんなさいっ!!」


頭で考えるより、私の口が勝手に動いてた。