オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

「花美?」


さっきまで繋いでいた手を宙に浮かせたまま、佐々くんが不思議そうに私の顔を見つめてる。

どおしよう、急に大きな声出しちゃったから、変に思われたかも知んない。


「あ…あの、…あのね!」


言葉が、続かない。


どうしよう。

じんわりと嫌な汗が滲み出してきた。

呼吸が浅くなってきたのがわかる。

カラダがどんどん重くなっていく。


なんとかここから離れる方法を必死で考える…と、その時、いいコトを思いついた。

いや、“思い出した”が正解。

大体、そのことを言うために会いに来たってコト、すっかり忘れてた。


「そ、そうだった!あのね!今日はちょっと用事があって、デートはできないの!!」


そう、言い終わったときだった。


「伊都おぉおっ!この……バカ息子があっ!!!!」


突然、背後から襲った大声に、私の声はかき消された。

振り向くと、水色が涼しげな絽(ろ)の着物を着たきれいな女性が、ものすごい勢いでせまってくる。

む…むす…

息子ぉおっ!?

もう一度、佐々くんに視線を移すと、


「…チッ……」


物凄くめんどくさそうに、舌打ちをした。


は…はは、

母デスかぁああ!?