車窓からの景色が、そろそろ到着することを告げている。
さて、どおしたもんかな。
花美は、まだ威嚇中。
そろそろ、にらめっこも飽きてきただけど。
「いつまで、そうしてるつもりだよ……」
「……」
花美は、じぃ~…っと、オレの顔をねめつけると、
プイッっとそっぽを向く。
「Hするだけって、約束だったくせに…」
「お前なあっ!!」
「佐々くんの、ウソつき」
「仕方ねぇだろっ!!スキになっちまったんだからっ!!」
なんだよっ、その態度!
ムカッつくなぁ~っ
腹立つなぁ~っ
そりゃあ、何やったって、キライになれそうもねぇよ?
でも、可愛さ余って何とかって言うだろ!
それだ、それ!!
力づくで抱きかかえて、車から降ろしてやろか!
「あ…あの、…到着しております…が……」
「「!!!!」」
突然、遠慮がちにかけられた声に、二人そろって跳ね上がった。
同時に声の主を見る。
舞い上がってて、すっかり存在を忘れてた。
運転席からバツが悪そうに、20代後半だろう若い運転手が振りかえってる。
見たことねぇな……新しく入ったやつか?
胸のネームプレートに『石田』。
やっぱ、知らね。
けど……
「…ぇ、え…うそ…、やだぁ……」
震える声に、再び視線を花美に戻すと、
さっきまで威嚇して強気な猫は、ひざを抱え込んで、さらにひとまわり小さくなってた。
大きな目にキラキラ光る涙を湛えて、
真っ赤になって、震えてる……
恥ずかしそうに、上目遣いで、
ジィ~……っと、
『石田』を見てる。
――は~な~び~…お前……
わざとじゃないトコロが、なおさらタチが悪りぃ……
「…ぇ…と、その…スミマセン…」
そういいながら頬を染め、あからさまに花美に見とれてる『石田』に殺意。
ドカッ!!!!
「見てんじゃねぇよっ!!」
足蹴にした。

