ジフンは、このふたりがずっと姫花を慕っているのを知っていた

特に、賢次は幼い頃から一途に姫花を想い続けているのだ

ずっと近くにいたのに、その距離が崩れていくのに躊躇して、姫花に気持ちを伝えることができない・・元祖ヘタレ

そして、それに続く潤也

情けないなんて、自分が一番よくわかっている

わかっているからこそ、他人に指摘されると悔しいし、ましてや、姫花の心も体も持っていったヤツに言われるんだから、たまったもんじゃない

賢次は、掴みかかる二人の手を力でほどき、潤也とジフンが息つく間もないまま、ジフンの腹部に拳をめり込ませた

「グ・・フッ・・」

その一発でジフンは床に膝をつけ、丸くなってしまった

売り物の顔を殴るなんてことはしない

「賢次!!」

りんが真っ青な顔で叫ぶ

他の生徒の叫び声や、どよめきで教室中パニックになっている

潤也は苦しむジフンに目をやり、賢次の肩をポンッと叩き、そのまま教室を後にした

姫花は、今まで見たことのない賢次にビックリして固まったまま

「おい! 授業始まってるぞ~ 何してる~」

教師の声がかかり、野次馬達は、その場を後にしていく

ジフンはなんとか自力で立ち上がり、お腹を押さえながら自分の席についた

賢次はそんなジフンを横目に悠々と教室を出ていった

姫花とりんもそのまま賢次の後に続いていく

「なんだ~ お前等仕事か~ 頑張れよ~」

何も知らない暢気な教師の言葉だけが虚しく教室に響いていた