「ったく・・なんであたしなのよ・・・」

ふて腐れるりんの声は波の音にかき消されていく

「・・・まぁまぁ・・」

りんの横で苦笑いの潤也

「は~い、じゃあ撮影はいりま~す!!」

スタッフの大きな声がビーチに響き渡る

潤也とりんは今からこのコバルトブルーの浜辺でCMの撮影だった

この観光ビーチの親善大使を務める潤也は、相手役にりんを指名したのだ

25歳になって、長時間のビーチでの撮影は正直避けたいのがりんの本音

しかも、日差しが強い

「どうせなら、ピッチピチの新人グラビアアイドルとでもやんなさいよ!」

「は~い、 りん~ 笑顔でねぇ~」

「・・・・・」

「りんちゃ~ん」

スタッフからは見えないところで二人の攻防は続いている

「・・・ホテルから1時間かかるカフェのパンケーキ、おごってくれたら許す・・」

「・・了解!!」

二人の間で密約が交わされたお陰か、撮影は予定時間を大幅に繰り上げ終了した


*******

「はぁ~ 潤也~ きもち~」

潤也の運転するオープンカーの助手席でご機嫌なりん

「・・・・・ったく・・日焼けするんじゃなかったのかよ!?」

「え~ なに~ 全っ然聞こえない!!」

絶対聞こえているりんの返答は力強い

「あ~ ストップ、ストップ!! ちょっとあそこの店寄って?」