卒業式からしばらく経ち、桜の花がチラホラ咲き始めた頃、ガクがおもむろに口を開いた

「なぁ・・ 姫花、留学しろ」

突然の言葉に、ガクを偽視する姫花

「なんも裏なんかね~って・・ ただ、進学もしねぇ 仕事も休んでいるだろ? 毎日何するわけでもね~ ニートってやつだろ? ここにいても、意味ねぇんだから、視野広げてこいや」

とガクは姫花の前のテーブルに航空チケットを投げた

「うちのジェット・・メンテナンスに引っかかって、しばらく飛べねぇらしいから、ちょっと窮屈だろうけど、我慢な?」

姫花は行くとも行ってないのに、ガクの中ではもう決定事項らしい

「なんで、シアトルなの?」

ガクが投げたチケットを見た姫花

「あ~ ちょうど賢次が仕事でシアトルなんだよ? 」

「ふ~ん・・ 賢次んとこに行くの?」

「誰も知ってる人がいないより、いいだろ? 空港まで、賢次が迎えに来てくれるしさ」

ガクは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながら説明している

「いつ行くことになってるの?」

「明後日・・・」

「荷物は?」

「向こうでそろえればいい・・」

「行かないってのは?」

「ないな・・・」

「・・・・・・」

「色んなモン吸収して来い! 丁度親父がシアトルの映画祭に出席するらしいから、久しぶりに会って来いよ・・」

「パパかぁ・・・」

ガクと姫花の父親は有名な映画監督・・

かれこれ何年会っていないだろうか・・

「じゃあ、気をつけて行って来いよ?」

とガクは出かけようとする

「え? 仕事?」

「今日から3日間、沖縄ロケ・・ とりあいず、成田で電話よこせ・・ じゃあな」

慌しく、ガクはリビングを後にしたのだった