姫花がここに来るのは2回目だった

一度目は8月の終わり・・

2年前の2学期の始業式の日だった・・

そう、ガクが仕事だったので、日向と二人で帰ることになり、その時に来たのがこの浜辺だった

あの時、日向が連れて行ってくれたお店は、オーナーが変わったのか、外観がガラッと変わっていて、姫花は、店に入るのをやめ、そのまま浜辺に下りてきた

少し、浜辺を歩いた姫花は、どこから流れ着いたのか・・ 転がっていた流木に座った

この浜辺の景色が、ふたりで一緒に見た初めての景色・・

ふたりのはじまりの場所だと思っていた

潮の香りと波の音を感じた姫花は、立ち上がり、カバンの中から小瓶を取り出した

潤也がくれた日向のカケラだった

手のひらに、日向のカケラを乗せていくと同時に風が運んでいってしまう

一瞬のうちに小瓶は空になった

空を見上げた姫花の瞳から流れる涙も風が運んでいく

今日、ここに来ることは前から決めていた姫花

高校生の恋愛なんて、子ども同士なんだから・・って笑う人もいるかもしれない

生きている時間が短いんだから、大人の恋愛に比べたらまだまだ・・なのかもしれないけど、それでも、心から大好きだって思っていたし、自分なりに恋愛していた

結婚とか、そこまで考えてはいなかったけど、ふたりの未来に終わりがくるなんて想像さえしなかった

神路日向との時間を後悔しない

日向に愛してもらった事実は、女としての誇り

今も、日向を愛してる

彼を、忘れない・・

でも、思い出さないよ・・・

そして、姫花は、振り返ることなく、浜辺を後にした