それから1週間もしないうちに姫花は、再び日本の土を踏んだ

あの日着ていた制服と、履いていた上履きをキャリーケースに詰め込んで・・

姫花の私物は、そのままにしてきた

潤也が

「何時来てもいいように、このままにしておけば?」

と全て持って行かせるのをためらったのだ

姫花も、荷物が多くなるのも嫌だったし、また遊びに来るつもりでいたので、言葉の意味を深く考えることはせず、そのまま残してきたのだ

そして、手持ちのバックの中の小瓶には、あの日潤也が小分けした日向が入っていた

予想通り、税関で引っかかり、しばらく拘束されたが、なんとかゲートをくぐることが出来た

戻る事は、誰にも連絡をいれていなかったので、空港に迎えは来ていなかった

姫花は、迷うことなく、リムジンバスに乗り込んだ

新宿までの車内で思い出されるのは、日向とお別れをした日の事・・・

潤也の家に集合した翌日、飛行機に乗り、ロンドンに飛んだ

そして、日向の里親が眠る丘に無事、埋葬することが出来た

棺ではなく、骨壷に入った日向は、日向の愛用したバイオリンと沢山のバラに囲まれ、みんなに土をかけてもらった

最後の土が掛けられた後、姫花はその土にキスをし、日向は完全に見えなくなった

多忙を極めるメンバーゆえ、ヒースロー空港でそれぞれの生活する地へと戻っていったのだ

もちろん姫花は潤也とふたりで、潤也の家に戻ってきた

潤也にしてみれば、姫花がりん達と日本に戻っていく事も考えていたので、一緒に戻ってきてくれた事に安堵した

ずっと想いを寄せていた姫花と暮らした2ヶ月あまりの時間は、潤也にとっては幸せだったのだ

神路日向という人間を知れば知るほど、敵わないと思ってきたし、何より、姫花が幸せそうに笑う姿を見て、諦めきれないけど、閉じ込めておこうと決意したどこにも向けられない自分の気持ち

そんな生活にも慣れた時、逝ってしまった日向と傷つき、自分を失った自分の愛する女、姫花