潤也と俺で一度確認した遺体だった

化学薬品を浴びた日向の肌は溶け、髪はなかった

いくら、その遺体を日向だと姫花が言い張ったとしても、ブレスレットがなければ、DNA鑑定をしなければふたりは信じられなかっただろう

恋人を亡くした姫花と親友を亡くしたガクは、その場から動けずにいたため、潤也が遺体引取りの手続きをした

日本から持参した日向のヘアーブラシを提出し、DNAが一致して初めて引取りの許可が降りるらしい

その日は、一旦ホテルに戻った三人

しばらくすると、ガクが少し落ち着いた様子で、潤也が淹れたコーヒーを口にした

「潤也、悪いけど、俺は明後日には戻らないとならない・・ でも、姫花をこのままの状態で連れてはいけない・・・」

そう言ってガクは、姫花に視線をむけた

姫花の目には生気がなく、表情もなかった

「・・・DNA鑑定が出て、遺体を引き取れても、日向さんの里親がロンドンの郊外に眠っているらしいので、同じ墓地に埋葬になると思いますし、姫花もこっちにいたいと思います 俺がついてますから・・・」

と潤也は姫花の隣にすわり、髪を撫でた

「・・・本当は、俺が側にいなきゃならないんだ・・ でも、どうしても抜けられない仕事が詰まってる」

とガクは顔を歪めた

「俺の事は気にしないでください ちょうどこっちに拠点を置いて、高校の単位も仕事の実績とレポート提出で卒業になるので、姫花は病気療養ってことにしておけば単位の心配もないですよ・・ それに、この状態じゃ行けるはずもないですし・・」

と潤也は姫花を撫でる手を止め、悲しそうな表情をした