日向と姫花はカウンター席で静かに飲んでいた

「今年は、どんな一年になるのかな~」

時計の針は、新年を迎えまだ、数分しか過ぎていないのだが、“去年”という過去になってしまった数分前が、すごく昔のように感じてしまう

姫花にとって、確実に人生の節目になった一年だった

「俺、今年は我慢の一年になると思う・・」

日向は、姫花に視線を落とした

「なんで? 何を我慢するの?」

「来月、またウイーンに戻る事になったんだ」

そう、日向はガクのSOSに応じて帰国していたのだ・・と姫花はふと思い出した

「あ~ そっか~ なんか寂しいな~ 次はいつ戻ってくるの?」

「・・未定・・」

寂しそうに笑顔を見せる日向

「え?」

姫花の表情は一気に険しくなった

「んな顔すんなって! 俺、バイオリンもっと極めてくるわ! 俺等の世界で神様みたいなじーちゃんの先生がいてさ、その先生が指導してくれるって話しがきてんの 俺、その下で鍛えてもらってくる」

日向の目は、キラキラしていて、嬉しそうに話す日向の横顔に姫花も思わず、笑みがこぼれる

「会いたくなったら、いつでも来い! 姫花が会いたくなったときは、俺はもう姫花不足で、干からびて、蒸発寸前なハズだから」

暗い空気にならないようにしている日向の気持ちが、伝わってきて、姫花の目に溢れる涙

そこへ

「姫ちゃ~ん!!!」

大吾のキスから逃れてきた咲がやってきた

「え! 姫ちゃん! どうしたの? なんで、泣いてるの?」

姫花の顔を覗き込み、驚いた咲

咲の声に、まさか姫花が泣いているとは思わなかった日向が

「え!? 姫!!」

と焦っている