今日の帰りはたまたま、バスの席に座ることができた。

「ねえ梨乃さん、」


「どうしたの?」


「昼にさ、阿久津先輩と話してなかった?
いつの間に仲良くなったの?」



「え?ああ、功なら話しても大丈夫だよね。

朝プリント落っことしちゃって。それで先輩が拾ってくれたんだけど、その時にうっかり。
先輩の笑顔が嘘っぽいって
言っちゃったの。」


「笑顔が…嘘っぽい?たしかに…。」


「功も?やっぱり。」


功も勘がいいんだね。


「それで?」


「それで、私が普通の子と違うから仲良くしてみたいだってさ。」


私はあえて先輩の今日の告白を、功には話さなかった。だって本当の事なのかもわからないんだもの。



「ふーん。でも梨乃、僕の事よりも先輩のこと、好きになっちゃダメだよ?」


功は私をまっすぐな目で見た。

夕日も当たって、色素の薄いその目は
私を掴んで離さなかった。



「え?」


「絶対だからね。
じゃあ、少し寝るね。」


功は私の肩で眠りについた。




功はどうやら私を独占したいみたい。
そんな功に、私は嬉しく感じるけど、

その後の能天気モードで一気に寂しくなってしまう。



きっと功は、呑気で自由な性格だから
本気かどうかは別として
それもただの気まぐれなんだろうって

思ってしまうから。