「功…起きて。もう放課後だよ。」

午後からずっと机に突っ伏していた功。


「そんなに僕寝てたんだ…。」


「うん。早く帰らないと教頭に怒られるらしい。怖いんだって!」


これは功を早く帰らせるための嘘。


「え、そうなの。
んー。ね、梨乃。はいっ。」


功は、そうして腕を広げて私に笑いかけた。


「え?今?だってここ学校だよ?誰かに誤解されるよ。」


「別に梨乃なら誤解されても平気だよ。」

「え?まさか私のこと男かなんかだと思ってる?…功、それは心外だよ。」


「なんでそうなるの?もう梨乃は知らなくていいの。ほら、おいで。」

「うんっ。」


私たちはそうしてハグをする。
すると功は私の髪に顔をうずめた。

そんな功の背中に触れ、とんとん、とつついてみる。


「梨乃の髪、いい匂いする。」

「そうかな?シャンプー変えてみたんだ。
きっとその匂いだね。」


「うん。梨乃…」


「どうしたの?」


「んーん。なんでもない。」



功は背が高くて、大人っぽい外見のくせに、
私の前では甘えんぼさんなんだ。


私も強がってるわりに功の前では、甘えんぼなんだ。


お互い様だね。