「もういいだろ? その辺でさ」 上川くんが冷たく言い放って、私はハッと我に返った。 周りも静かになって、ひぐらしの声が聞こえた。 「え? 何? 何怒ってんの?」 真奈が薄笑いで上川くんに言った。 「別に」 上川くんはやっぱり冷たく言い放つ。 らしくない。本当にらしくない。どうしたんだ? 上川くん。 「あれ? まさか、怒ってるんじゃなくて、すねてる?」 え? すねてる? それってまさか……。