「これ、落とした?」



「あ、あ!」




平野先輩の手には私の定期券が。




「ありがとうございます!」




「うん。今日、2回目だな。」





「そうですね。演奏会…見に来てくれてましたよね?」




「げっ、気づいてた?バレねーように見てたのに。」





苦虫を噛み潰したような顔をした平野先輩。バレないようにしてまで、見に来る理由ってなんなんだろ?もしかして……吹奏楽部に好きな人でもいるのかな?





「吹奏楽部に、好きな人いるんですか?」





「え!?なんで??」





「だって、バレないように見に来てたみたいだから……。」






「ん、まあ、ちょっと気になる人がいる…かな?」




ズキッ……




ん?なんで胸が痛いんだろ……。先輩の照れたような綺麗な笑顔に、心打たれただけ?





「そうなんですね!応援します!」





「ありがとう。」





「あ、電車きた。私、これ乗るので…また!」




「あ、俺、友達待ってるから電車乗れねーや。また!」





平野先輩と別れて電車に乗る。西田達は1本前の電車に乗ったみたいで、車内にはいなかった。




ピロンっ





ん?西田からLINEだ。





[明日暇?]






めっちゃ短文。いつも西田は要件とかしか、伝えないんだよね。





[放課後?]





[うん。]





既読早!





[部活があるから……。]






[俺もあるから部活終わったあと。少しだけ買い物に付き合って。]





[ん、いいよ!]






[さんきゅー。]






スタンプを送り、スマホを鞄に直す。自分の家の最寄り駅に着き、電車からおりる。そのまま私はまっすぐ家に帰った。