「秘書の玉川さんいるでしょ?ほら、最近入った。あの子が合コン誘ってくれてね」

玉川さんは新卒で先月秘書に入ってきたかわいい女性だった。

何でもその玉川さんの大学時代の先輩の会社の人達との合コンだったらしく、亜紀にとっては同世代の男性が多く楽しかったようだ。

「やっぱり同じ年だとすぐに意気投合しちゃって。その盛り上がった中の1人と連絡先交換したんだよね」

「えー、どんな人なの?」

「すごく優しくておもしろいの。関西出身なんだって」

いつも明るくて花のある亜紀にはおもしろい人がお似合いのような気がした。

「まだ友達だからね。何か進展あったら知らせるわ」

亜紀は楽しそうに、だけど少し恥ずかしそうに笑った。

「それより、真琴の方はどうなの?例の御曹司とのお見合い話は進んでる?」

「お見合い?」

あ、そうか。藤波専務がそんな話持ちかけてたっけ。

澤井さんの転勤話と同居話ですっかり忘れていた。

「藤波専務のお見合い話はきっと冗談よ。お酒も随分飲んでたみたいだし」

「そうなの?残念。あれ以来澤井さんとは会ってないの?運命的な遭遇はしてない?」

亜紀は私の顔をのぞき込みながら尋ねる。

運命的な遭遇ね。

確かにそれに近い遭遇の仕方はしたけれど、この曖昧な関係が続く限り誰にも澤井さんとのことは話さないでいようと思っていた。

「ないよ」

「本当?最近、きれいになったって秘書室でも噂になってるらしいよ」

「んなこと」

恋をするときれいになるっていうけれど、私にはまだそんな実感はなかった。

ただ、今までより少し鏡に向かう時間が長くなったかもしれないけど。