ゆっくりと彼の顔を見上げると、彼はとても穏やかな瞳で微笑んでいた。
「このバッグ、私が小学生の時に母に作ってもらったんです。使いやすくて未だに持っていて」
その瞳に思わず口をついて言葉がこぼれた。
そんな話を言おうなんてこれっぽっちも思ってなかったのに。
「何でも新しいもの欲しがる人間より、君みたいに大事な人からもらったものをずっと使い続けるような人の方が俺は好きだよ」
目を大きく見開いて、彼の顔を見つめた。
このバッグを持ってる私はいつも出会う男性に馬鹿にされていたのに、そんな優しい言葉をかけてくれた男性は彼が初めてだったから。
だけど、こんなにかっこいいんだもん。
きっと女の人に慣れてるだけだ。
女の人を傷付けない言葉を選んで言ってくれてる親切な人ってだけ。
これ以上、こんな人のそばにいたら男性に慣れていない私みたいな人間はすぐに気持ちが持って行かれてしまう。そんな自分をなんとか奮い立たせて小さな声で言った。
「今日は何度も助けて頂いてありがとうございました。じゃ・・・・・・」
そのままくるりと彼に背を向けてその場を立ち去ろうとしたとき、私の肩が背後からぐっと掴まれた。
「ちょっと待った」
「え?」
「俺、」
松葉杖で体を支えたまま、顔だけ彼の方に向ける。
「俺、明日までここに泊まってるんだ。君は?」
「私は・・・・・・明後日まで」
「その足じゃ、スキーもできないだろう。俺もやんごとなき事情で明日も暇なんだ。よかったらまたここで会わないか?」
やんごとなき事情って?そんな言えないような特別な事情なの?
その事情が知りたいようで知りたくないようで。
この人は・・・・・・この得体の知れないイケメンは、相当な遊び人かもしれない。
亜紀も言ってたっけ、優しい言葉かけてくるイケメンには要注意だって。
だけど、私は明日も暇だ。
どうせスキーもできず、部屋で時間をつぶすだけ。
だったら、1日くらいこの人と一緒に過ごすくらい平気だよね?
明日が終わったらきっともう彼とは会うこともないんだし。
母のバッグが引き合わせてくれた、ささやかな縁ってことで。
私はドキドキしているのを悟られないように彼の目を見ずに頷いた。
彼は爽やかな笑顔を向けると私に名刺を差し出して言った。
「俺は、澤井涼太。明日の10時、またこのロビーで待ってる」
澤井さんは私に手を振り、自分のパソコンを置いているテーブルに颯爽と戻って行った。
もらった名刺に視線を落とすと、そこには『澤井ホールディングス 海外フード営業チーム部長 澤井 涼太』と書かれてあった。
澤井ホールディングス??
って、あの食品メーカーで国内トップシェアの会社だ。
確かうちとも取引があったような。
しかも営業部長だなんて。
それに澤井が名字ってことは、ひょっとして、ひょっとする??!
そんなすごい人に、私みたいな冴えない人間が声をかけられるなんて、そんな奇跡ってあるんだ。
もう一度名刺に目をやり、小さく彼の名前をつぶやいた。
澤井、涼太。
若く見えるけど、部長だったら私よりも随分年上かもしれない。
前髪に隠れた知的な切れ長の瞳が印象的な美しい男性。
そのスレンダーな後ろ姿をいつまでも見つめていたい衝動を抑えながら、ゆっくりと前を向いた。
「このバッグ、私が小学生の時に母に作ってもらったんです。使いやすくて未だに持っていて」
その瞳に思わず口をついて言葉がこぼれた。
そんな話を言おうなんてこれっぽっちも思ってなかったのに。
「何でも新しいもの欲しがる人間より、君みたいに大事な人からもらったものをずっと使い続けるような人の方が俺は好きだよ」
目を大きく見開いて、彼の顔を見つめた。
このバッグを持ってる私はいつも出会う男性に馬鹿にされていたのに、そんな優しい言葉をかけてくれた男性は彼が初めてだったから。
だけど、こんなにかっこいいんだもん。
きっと女の人に慣れてるだけだ。
女の人を傷付けない言葉を選んで言ってくれてる親切な人ってだけ。
これ以上、こんな人のそばにいたら男性に慣れていない私みたいな人間はすぐに気持ちが持って行かれてしまう。そんな自分をなんとか奮い立たせて小さな声で言った。
「今日は何度も助けて頂いてありがとうございました。じゃ・・・・・・」
そのままくるりと彼に背を向けてその場を立ち去ろうとしたとき、私の肩が背後からぐっと掴まれた。
「ちょっと待った」
「え?」
「俺、」
松葉杖で体を支えたまま、顔だけ彼の方に向ける。
「俺、明日までここに泊まってるんだ。君は?」
「私は・・・・・・明後日まで」
「その足じゃ、スキーもできないだろう。俺もやんごとなき事情で明日も暇なんだ。よかったらまたここで会わないか?」
やんごとなき事情って?そんな言えないような特別な事情なの?
その事情が知りたいようで知りたくないようで。
この人は・・・・・・この得体の知れないイケメンは、相当な遊び人かもしれない。
亜紀も言ってたっけ、優しい言葉かけてくるイケメンには要注意だって。
だけど、私は明日も暇だ。
どうせスキーもできず、部屋で時間をつぶすだけ。
だったら、1日くらいこの人と一緒に過ごすくらい平気だよね?
明日が終わったらきっともう彼とは会うこともないんだし。
母のバッグが引き合わせてくれた、ささやかな縁ってことで。
私はドキドキしているのを悟られないように彼の目を見ずに頷いた。
彼は爽やかな笑顔を向けると私に名刺を差し出して言った。
「俺は、澤井涼太。明日の10時、またこのロビーで待ってる」
澤井さんは私に手を振り、自分のパソコンを置いているテーブルに颯爽と戻って行った。
もらった名刺に視線を落とすと、そこには『澤井ホールディングス 海外フード営業チーム部長 澤井 涼太』と書かれてあった。
澤井ホールディングス??
って、あの食品メーカーで国内トップシェアの会社だ。
確かうちとも取引があったような。
しかも営業部長だなんて。
それに澤井が名字ってことは、ひょっとして、ひょっとする??!
そんなすごい人に、私みたいな冴えない人間が声をかけられるなんて、そんな奇跡ってあるんだ。
もう一度名刺に目をやり、小さく彼の名前をつぶやいた。
澤井、涼太。
若く見えるけど、部長だったら私よりも随分年上かもしれない。
前髪に隠れた知的な切れ長の瞳が印象的な美しい男性。
そのスレンダーな後ろ姿をいつまでも見つめていたい衝動を抑えながら、ゆっくりと前を向いた。



