窓の向こうの公園で、親子連れやカップル達が楽しそうに語らっているのが見える。

ついこないだまで見知らぬ相手だったのに今はこうして一緒に2人でお茶してる。

最初に出会った時はあんなにドキドキして呼吸もままならないほどだったのに、こうして2人で色んな話をしたりして。

これも、澤井さんと一緒にいることで少しは男性に慣れてきた証拠?

もっと、一緒にいたら、もっと普通にこの関係を楽しめるようになるのかもしれない。

そうしたら、澤井さんじゃない誰かと素敵な恋ができるようになってるのかな。

澤井さんじゃない誰かと・・・・・・。

アップルティのカップを傾けながら、公園をぼんやりと見つめた。

「ごめん」

スマホを手にした澤井さんがテーブルに戻って来た。

「今日の夕方、本社で緊急会議が入ってしまってこれから戻らなくちゃならない」

そうなんだ。

しょんぼりする気持ちがそのまま顔に出ていたんだろう。

「そんなに残念?」

澤井さんはフッと笑うと私の頬にそっと自分の手を当てた。

冷たくて繊細な指が私の頬を撫でる。

「ひゃ」

思わず声が出て顔を引いてしまった。そんな私を穏やかな目で見つめながら彼は言った。

「なんだかその残念そうな顔があまりにもかわいくて思わず触れちゃったよ」

顔がかーっと熱くなる。

そんなこと、平気な顔で言わないでほしい。私の気持ちを見透かされただけでも恥ずかしすぎるのに。

「今度、またゆっくりとデートしよう。どう?少しは楽しめるようになってきた?」

澤井さんは会計を済まし、私を振り返って言った。

「はい。す、少しは」

そう答えた瞬間、彼はおでこに手を当てて笑い出した。

「そっか。少しは慣れたんだ。ほんと君は素直でいいよ」

そう言うと、私の肩に手を回し顔を近づけてきた。

「じゃ、今度会う時はもっと接近してみようかな。真琴」

すぐ真横にあのきれいな顔があって、私を『真琴』だなんて呼び捨てにする。

一気に体が固まった。

動けない。

「あれ?少しは慣れたんじゃなかった?」

「・・・・・・ま、まだそういう感じは無理です」

固まったまま前を向いて答えた。