美術館はコンクリート打ちっ放しの真四角で薄茶色のペンキが塗られたそれほど大きくはない建物だった。
一見無味乾燥な建物の中に、きっと若い創造の息吹が溢れている。
こんな場所にあまり足を踏み入れたことのない私は澤井さんの手をぎゅっと握り締めた。
中に入ると何人かの新鋭芸術家が集まってグループ個展が開かれている。
シャープな色彩の油絵や、彫刻、粘土で作られた立体もの。
様々な種類の作品がほどよい間隔を置きながら展示されていた。
全て見終わった一番奥に一点の絵が飾られている。
澤井さんはその前で足を止めた。
珍しい三角のキャンパスの上に無数の色とりどりの四角が並んでいる。まるでピラミッドみたい。
時々その四角の中に人の顔が描かれている。
無表情なその顔は鮮やかな色の中でとても寂しげに見えた。
タイトルの札に視線を落とすと『ピラミッド・ファンタジー』と書いてある。
やっぱりピラミッドがモチーフなんだ。
作者は?
桜坂香子(2010年製作)と書かれてあった。
きっとまだ駆け出しの若い女性なんだろう。
「この四角の一つ一つに思い入れが入ってるみたいで、思わず見入ってしまいます」
その絵を前にして私はそう言ってみた。
「ああ」
澤井さんもじっとその絵を見つめていた。
「この桜坂さんっていう作家さんもきっと若い方なんでしょうね。将来楽しみだな」
私がそう続けると、私の手を握っていた彼の手がそっと離れた。
汗ばんだ私の手のひらに冷たい空気が通り抜ける。
「彼女はもういないんだ」
澤井さんはその絵を見つめたまま小さく呟いた。
「いない?」
彼の顔を見上げて思わず聞き返す。
「彼女は5年前に交通事故で25歳の若さで亡くなってね」
「そう、なんですね・・・」
そう言った澤井さんの横顔がとても寂しくて、どうして彼女のことをそんなに知っているのか聞きたかったけれど言葉を繋ぐことができない。
ふと、彼のサイドボードの上の写真の彼女が頭をよぎった。
一見無味乾燥な建物の中に、きっと若い創造の息吹が溢れている。
こんな場所にあまり足を踏み入れたことのない私は澤井さんの手をぎゅっと握り締めた。
中に入ると何人かの新鋭芸術家が集まってグループ個展が開かれている。
シャープな色彩の油絵や、彫刻、粘土で作られた立体もの。
様々な種類の作品がほどよい間隔を置きながら展示されていた。
全て見終わった一番奥に一点の絵が飾られている。
澤井さんはその前で足を止めた。
珍しい三角のキャンパスの上に無数の色とりどりの四角が並んでいる。まるでピラミッドみたい。
時々その四角の中に人の顔が描かれている。
無表情なその顔は鮮やかな色の中でとても寂しげに見えた。
タイトルの札に視線を落とすと『ピラミッド・ファンタジー』と書いてある。
やっぱりピラミッドがモチーフなんだ。
作者は?
桜坂香子(2010年製作)と書かれてあった。
きっとまだ駆け出しの若い女性なんだろう。
「この四角の一つ一つに思い入れが入ってるみたいで、思わず見入ってしまいます」
その絵を前にして私はそう言ってみた。
「ああ」
澤井さんもじっとその絵を見つめていた。
「この桜坂さんっていう作家さんもきっと若い方なんでしょうね。将来楽しみだな」
私がそう続けると、私の手を握っていた彼の手がそっと離れた。
汗ばんだ私の手のひらに冷たい空気が通り抜ける。
「彼女はもういないんだ」
澤井さんはその絵を見つめたまま小さく呟いた。
「いない?」
彼の顔を見上げて思わず聞き返す。
「彼女は5年前に交通事故で25歳の若さで亡くなってね」
「そう、なんですね・・・」
そう言った澤井さんの横顔がとても寂しくて、どうして彼女のことをそんなに知っているのか聞きたかったけれど言葉を繋ぐことができない。
ふと、彼のサイドボードの上の写真の彼女が頭をよぎった。



