湖にうつる月~初めての恋はあなたと

『谷浦真琴様のお部屋でしょうか?』

「はい、そうですが」

『スマホと財布の入ったバッグを1階ロビーにお忘れになられていませんでしょうか?フロントに届いております』

「え?!」

スマホの入ったバッグって?

ひょっとして私、ロビーに置き忘れてきた?

部屋を見渡すも持っていったはずのセカンドバッグは見当たらない。

「すみません!すぐに取りに伺います!」

叫ぶように伝えると、受話器を置いて松葉杖を手に取り、急いで部屋を出た。

丁度開いていたエレベーターに乗る。

あー、ばかばか。

男性に気を取られていて、すっかり忘れていた。

大事なスマホと財布の入ったバッグだったから盗まれてもおかしくなかったのに、ほんとラッキーだったわ。

1階に着き、「チン!」と音を立ててその扉が開いた。

松葉杖を突きながらフロント目がけて急いだ。

「っと!」

急に視界がくらっとゆがんで足下がすくわれた。

しまった、ここ、段差があったんだわ!

そう気付くも、既に無残にも片方の松葉杖がその段差から滑り落ち、体が斜めに崩れた。

片膝を強打しその場でうずくまる。

バッグが届けられたのはラッキーだったけど、年始からついてないっていうのはそう簡単には払拭できないものなのね。

半分泣きそうになりながら、松葉杖を起こし顔を上げた。

「大丈夫?」

私の顔の前に大きな手のひらが差し出された。

「え?」

その手の主の顔を見上げた途端、ボッと顔が燃えるように熱くなる。

さっき抱き起こしてくれた彼が心配そうな顔で私に手を差し出してくれていた。