妙に静かな車内にラジオの音が際立つ。

ノリのいいDJのテンションに違和感を覚えながら、こういうとき気の利いた会話ができるといいのにな、とため息が漏れた。

沈黙に気を遣ったのか澤井さんが口を開いた。

「で、君はどうしてここに?まさか君こそこんな住宅街でお見合いしてたとか?」

「いえ・・・・・・お見合い相手の方とデートしていて、その帰りにちょっと不快な気持ちになって近くで下ろしてもらったんです。下ろしてもらったのがたまたまあの駅で」

「お見合い相手が君を不快な気持ちにさせるって、よほどのこと言われたのかい?」

澤井さんは驚いた顔で私に視線だけ向ける。

そんな風に尋ねられたら、一気にさっきのモヤモヤした気持ちが膨らんできた。

「言ってみろよ」

彼は優しく促した。澤井さんにとったらくだらない恋愛経験のない女性の話だろうけれど。

つい、澤井さんの優しい瞳に甘えてもいいような気がして、これまでの高嶋さんとのいきさつを一気に話した。

車は高速に乗り加速する。

運転に集中しているからなのか、私のくだらない話にどう答えればいいのか悩んでいるのか、澤井さんはしばらく黙って車を走らせていた。

一気に話した私はなんだか一人取り残されたような気持ちになって落ち着かないでいた。

私って、やっぱり変なのかな。

と、その時、澤井さんが堰を切ったように肩を振るわせて笑い出した。