高嶋さんはそんな私を見下ろして苦笑する。

「真琴さんは、映画に興味がないのか、それとも俺に興味がないのかな」

「え?」

「いつも俺に全て任せてるけど、もし気に入らないことがあれば何でも言ってほしい」

気に入らないこと、なんて今のところ見当たらなかった。

私みたいに優柔不断な人間には何でもちゃきちゃきと決めて先導してくれる方が楽だったし。

だから全て任せてただけなんだけど。

「そんなことないです。高嶋さんはとてもしっかりされてるし頼りがいがあって」

頼りがいがあって・・・だから?

その続きが言えず黙っていると、高嶋さんは優しく笑った。

「ごめん。困らせるつもりはなかったんだけど。まぁいいか、映画の時間もあるし急ごう」

「はい」

私はバッグを胸に抱いて頷いた。

その時、ふわっと高嶋さんの手に私の手が包まれる。

「手を繋がせてもらってもいいかい?」

嫌・・・とは、こんな状況で言えるはずがない。

男の人と手を繋ぐなんて、中学のフォークダンス踊って以来じゃないかなと思う。

高嶋さんは私の返事を待たずに手を握ったまま歩き出した。

きっとこれが普通なんだろうね。

いい年齢の男女がデート3回目で手を繋ぐなんて不思議なことじゃない。

何かの雑誌で読んだことがある。

だけど、私の握られた手には違和感しかなかった。

私は恋愛経験がないから、そんな風に違和感を感じてしまうんだ。きっと。

こうやって少しずつ距離を縮めて慣れていくうちに、きっと高嶋さんのことが好きになっていく。

澤井さんみたいに、その声だけでドキドキするくらいに。