3.お見合い


日曜日の昼下がり。都内でも指折りの高級ホテルのロビーのソファで座っている。

父が持って来たのお見合い相手、高嶋さんと待ち合わせていた。

第一印象は、背が高くて眼鏡をかけていて、一見真面目そうに見えるんだけど実はとても饒舌で話好きの男性だった。

外科医とだけあって頭もよく、それに、そこそこのイケメン。

私が気を遣ってしゃべらなくても、一人でしゃべって一人でよく笑う人。

これでもう3回目のデートになる。

友達には3回もデートにこぎ着けるなら、向こうも結婚視野に入れてると思ってオッケーだと言っていた。

そうなの?

3回デートしただけでわかるもんなんだろうか。

私には未だに高嶋さんが私の結婚相手になるってことが実感として沸かない。

腕時計に目をやると、待ち合わせの時間を10分ほど過ぎていた。

「真琴さん、お待たせ。手術が長引いてしまって」

シャツのボタンを緩めながら走ってやってきた高嶋さんの額にはうっすら汗がにじんでいた。

「いえ、忙しいのにいつもすみません」

私はそう言いながらソファから立ち上がると軽く頭を下げた。

「今日は、映画でもどうかなと思うんだけど」

「はい」

「観たい映画とかある?」

「別に」

「じゃ、これなんかどう?」

そう言って、高嶋さんは自分のスマホの画面に今流行ってる映画のタイトルを見せた。

正直、映画だったら何でもよかった。

昔から薄暗くて人のひしめき合う映画館が苦手で、映像よりも文庫本の文字を追ってる方が好き。

「高嶋さんのおすすめの映画でいいです」

私はスマホから視線を上げるとそう答えた。