「確かに手強い相手なのは確かだからね。私もリサーチしておくわ。何かわかったら真っ先に真琴に知らせるね」

「いいよ、そんなの」

本当にいいんだって。

これまでだって、そうやって私のために動いてくれた友人はたくさんいたけれど、どれもうまくいかなかった。

結局、私は男性が苦手ゆえに、男性にとったらおもしろみのない人間。

私みたいな人間は親が手配してくれたお見合いで結ばれるのが一番間違いないんだってこともわかってる。

だけど、結婚前に一度くらい、最高の恋愛をしてみたかった。

20代最後の1年。思いきり誰かに愛されて愛して、もしそれが繋がらなかったら私は手堅い人と結婚しようって。

亜紀なんかに言わせたら、くだらない夢だって言われるんだけどね。

どうせなら大恋愛の末にその人と結婚しなさいよって。

それができるなら、ここまで一人でいたりなんかしない。

誰にでも向き不向きがあるように、恋愛だってそうだって最近気づき始めた。


1日の仕事が終わり、電車に揺られながらぼんやりと正面の車窓に映る自分を見つめる。

疲れた顔。

精気のない目。

このまま、こうして私の1日は終わって、それが365日あっという間に過ぎていくんだろう。

手帳に挟んだ澤井さんの名刺を取り出した。

会社名の下に住所、電話番号。

その下に・・・・・・澤井さんの携帯番号とアドレス?

小さく手書きで書いてあった。

たまたま書いてあったのか、いつも書いてあるのかはわからない。

だけど、紛れもなくこれは澤井さんの個人情報なわけで。