12.決意が導くもの


私の決意も固まった週明けの午後、店の売り場を山川さんにお願いして、久しぶりに出社した。

これ以上会社を休むことは皆に迷惑かかることだし、かといって店を離れることもできない。

不安はあるけれど、今は父のために店に立つことが最善だと考えたから。

山川さんに伝えたら、一緒にがんばろうと言ってくれた。

そして、澤井さんもそばで支えてくれている。もし、何か困ったことがあったら、その時に考えようと思えるようになっていた。

総務部長に退職願いを出し、すぐに受付業務をしている亜紀の元に向かう。

丁度受付は空いていたので、こっそり亜紀を給湯室に呼び出して私の決意を伝えた。

「なんとなくそんな気はしていた」

と言いながら亜紀は私をぎゅっと抱きしめ、子どもみたいに涙をこぼした。

「寂しいよぉ、真琴がここにいなくなっちゃうの」

私も思わずつられて泣きそうになる。

そんな彼女の肩をさすりながら、何度も「ありがとう」と言った。

「これ、食べてみて。店で私が作って出してるの」

昨晩作った抹茶プリンを亜紀に二つ紙袋に入れて渡す。

「すごーい。すっかりパティシエじゃん!」

「パティシエっていう感じでもないんだけどね、唯一好評なお菓子かな」

「うちで彼と食べようっと」

「え?彼?」

思わず聞き流しそうになって、もう一度亜紀の顔をのぞき込んだ。

「へへ。ようやく成就したんだ」

亜紀は少し頬を染めて、前髪を掻き上げる。