どれくらい抱き合ったんだろう。
久しぶりの澤井さんの体温が心地ちよくて、ずっとくっついていたいような気持ちになる。

「せっかくのオムライス、冷えちゃったな」

彼は私の頭をそっと撫でた。

「すぐ温めなおしますね」

私は彼からゆっくりと離れ、けだるい体を起こす。

すると、澤井さんはすぐに私の腕を掴み、また自分の胸に引き寄せた。

「もう少し」

彼はそう言うと、私の首筋に唇を這わせる。

思わず、その甘い感覚に再び溺れていった。

彼の愛を受け、満たされた気持ちになると、最近までの不安で緊張した私の体が緩んでいく。

心と体は繋がっているんだということをはっきりと感じていた。


ようやくベッドから離れ、オムライスを温めに向かう。

レンジの「チン!」という音を合図にしたかのようなタイミングで澤井さんがダイニングに現れた。

「すっかり夜更けになっちゃったな。いや、もうすぐ朝か?」

彼はカーテンからそっと窓の外に目をやる。

時計を見ると朝の5時前だった。

もうこんな時間だったんだ。
彼と過ごす時間は時間の感覚が狂うような気がする。

「こんな時間じゃ、夜ご飯じゃなくて、朝ごはんですね」

「そうだね。まぁ、これも全部俺のせいだけど」

彼はいたずらっぽく微笑み前髪をかき上げるとダイニングテーブルのイスを引き、深く腰掛けた。

二人向かいあって、ゆっくり食事をとるのはいつ以来だろう。
ほんの数週間離れていただけなのに、随分懐かしいような気持ちになる。

オムライスを掻き込みながら、澤井さんが顔を上げた。

「その後、お父さんの具合はどう?」