彼の好きなオムライスを作った。

あと、クリームシチューも。多めに作っておいたからしばらくは私がいなくても食べれるだろう。

その日、夜遅く彼が帰ってきた。

「おかえりなさい」

扉が開くと同時に飛びだして行く。

「真琴」

澤井さんが両手を広げて待っているその胸に飛び込んだ。

ぎゅっと強く抱きしめられる。

京都以来だと思う。彼にこんな風に抱きしめられたのは。

温かくて大きな彼の腕の中が大好きだった。

「あれ?澤井さん少し痩せた?」

背中に回した手に少し違和感を覚えて聞いてみる。

「ああ少しね。最近激務が続いていたから。先週もほぼ日帰り状態でニューヨークに行ってたしね」

「大変だったんですね」

「でも、今日は真琴に会えたから大丈夫だ。疲れも吹っ飛んだ」

そう言うと、私の唇を塞いだ。とても深く熱く。いくらキスしても足りないくらいに求め合うように唇を合わせる。

「今日オムライス作ったのよ」

ようやく唇が離れて、彼の目を見つめて言った。

「今すぐ真琴が欲しい」

澤井さんの目は熱く潤んでいる。そしていつになく激しく私を抱きしめる。

ネクタイを緩めそのままベッドに二人で倒れ込んだ。

彼の声も唇も指先も私の全てを求めているような熱い抱擁。

呼吸するのももどかしいほどのキスを何度もし、普段の理性的な彼とは違う体と頭が切り離されたような野性的な彼は会えなかった時間を取り戻すように激しく私を抱いた。

「真琴、愛してる」

ひとしきり抱き合った後、彼は仰向けになった私の上に覆い被さったまま私の前髪をゆっくりと撫で上げる。

「私も愛してます」

言葉にしたらその言葉の重みがグンと自分にのしかかる。

愛という言葉がそんなに軽はずみに使える言葉でないことに口に出して初めて気付く。

「愛は、どんなことがあってもずっと消えないんだ」

彼の目は今にも泣きそうな程に熱く潤んでいる。

そして、澤井さんはその言葉の意味を必死に探している私の唇を優しく塞いだ。