ついさっき澤井さんからのLINEで店の前の公園で待ってると送られてきた。

公園は木々が生い茂り思いがけず広くて、彼がどこにいるのかすぐにはわからない。

辺りを見回すも、子ども連れの親子やお年寄りばかりが目に入ってくる。

澤井さんはどこ?急に心細くなった時後ろから声が聞こえた。

「真琴!」

「澤井さん?」

「ここだよ」

「どこですか?」

声は一箇所から聞こえている訳ではなくて、私が声の方を向くと違う場所からまた声が聞こえてきていた。

「ふざけないで出てきて下さい!」

相変わらず私をからかってるんだと思うけれど、今はそんなことよりすぐに私の話を聞いてほしい。

「おチビちゃん、もう終わりだ。またな」

茂みの中からすくっと長身の彼が現れた。

体中に茂みの葉をつけて。

「遊んで頂いてありがとうございました」

小さな子どもの手を引いた若いお母さんらしき人が澤井さんに頭を下げている。

「お兄ちゃん、ばいばい」

その小さな子どもは満面の笑みで彼に手を振っていた。

澤井さんも「ばいばい」と言ってその子に手を振った。

子どもを見つめる優しくて温かい彼の横顔にしばし見とれてしまう。

待ってる間、公園に来ていた子どもと遊んでいたんだ。

いつもは仕事ばかりで子どもと戯れてる姿なんか見たことなかったから、あんな笑顔で子どもと遊ぶんだってとても新鮮だった。そんな彼も大好きだと胸の奥が温かくなる。

「せっかく遊んでたのに邪魔してごめんなさい」

こちらに近づいてくる澤井さんに思わず謝った。

「何謝ってるの?はい、おしおき」

そう言いながら私の肩に手を置くと、彼の顔がすっと下りてきて、気付いたら唇が触れあった。

ほんとに一瞬の出来事で周囲にいる人達も全く気付いている様子はなかった。

澤井さんはいたずらっぽく微笑み私を見下ろしている。

変わらない彼のそんな姿がとても愛おしくて幸せだった。

「どうだった?」

彼はそっと私の手を握って公園をゆっくりと歩き出す。

私は京抹茶との今日までのいきさつを一気に話した。

最後まで聞き終えた彼はふっと口元を緩め私を見つめて言った。

「すごいな、真琴は。二日も続けて京都までやってくるなんて大したもんだよ」