どうして別れたのか聞きたいけれど、さすがにそこまで踏み込んで聞くのは憚られて、黙ったままうつむいていた。

「どうして別れたのか聞かないんだね。待ってるんだけど」

コーヒーカップを傾けながら彼の切れ長の目が私を試すように見つめていた。

私の心を見透かすような目にドキドキしながら、私もカフェオレを口に含み、呼吸を整えてから小さな声で尋ねた。

「じゃ、どうして別れたんですか?」

澤井さんはカップをテーブルに置き、「素直だね」と呟いてくすりと微笑む。

「どうやら俺がスキーばかりしているのが気に入らなかったらしい。この場所にきてスキーせずに何するんだって話だよね?そうしたら、『そんな人だとは思わなかった』って元旦の昼、部屋を出ていったよ」

その表情には落ち込んでいる様子はひとかけらも見当たらなかった。

恋愛経験のない私には、澤井さんのその姿が普通なのかそうでないのかもわからなかったけれど、そこまで余裕を感じさせる雰囲気から、きっと女性には不自由していないんだろう。

そんな男性から私って一体どんな風に見えてるのかしら。

「まぁ、別れ際には大抵同じこと言われるんだけど。彼女達は一体俺に何を期待して近づいてくるんだろうね。谷浦さんはどう思う?」

いきなり私に振ってきた澤井さんの不敵な笑みに一瞬体が後ろに引けた。