だって、この事に関しては譲れない。
私だけは絶対にね……
「あんたの夢見る頭に従ってくれなかったからって、水城くんを貶す事は誰がなんと言おうと私が許しません!!」
水城くんの味方なんです!
水城くんの支持者なんです!
水城くんの……正義なんです!
だって、大好きですから。
仁王立ちで言い切りフンッと鼻を鳴らすころには『やってらんない』なんて捨て台詞と共に雑踏をかき分け消えていく彼女の姿。
よし、勝った。
正義は勝つのだ。なんて誇らしくバルーンを肩に乗せたタイミング。
「何してんの?鈴原、」
背後から投げられた声の響きに『忘れてたぁ』っと体がビックゥゥと跳ねあがってしまう。
そろりそろり振り返り、視にくいウサギマスク越しに捉えた彼は無表情でこちらを見下ろしている。
「す、鈴原なんて知らないのです!私は……正義の味方なウサギ仮面で…」
「いや、俺の事知ってるこんな低身長の知人って鈴原くらいなんだけど?」
「っ……ち、違うのだよ。ほらあれだ……私は鈴原ちゃんに頼まれて…」
「さっき鈴原なんて知らないって言ったよね?」
「っ…………あ、正義が私を呼んでいるので……失礼しまーす」
下手くそな言い訳はどこまでもボロだらけ。
それを見事いちいち揚げ足を取ってくれる水城くんだから困ったものだ。



