そこから行く先々で人に追われることとなり、ついには尾鈴山まで来てしまった。

何でそれがわかったかというのも、そりゃここに「尾鈴山」と看板があったからなんだが・・・

話せば長くなるから説明はこの辺で。それよりも、奴らのこと。

最初は夢で何度か奴らカラスが追いかけてくる夢を見た。

何度も追い払ったり、俺の死体が食われてついばまれている夢を見た。

それが夢であればと思っていたが、俺は夢が現実になることが多すぎて困る。今回もそうじゃないか!

俺があいつらをニンジャかと思ったのも、カラスはすぐさま影となって、はっきりと肉眼で視認できる形で人間の実体に変化したからだ。普通現実では起こり得ない物質の変容に、驚く暇もなく現れた黒子のようなハイスピードの人間たち。どこからが事実で、どこからが炎天下の幻覚なのかわからないが、どう見ても奴らは見えている。これはイメージの産物じゃないことは、奴らの投げたクナイなどの武器が本物で、俺の頬を擦ったことに証明されていた。「ぎゃっ!(テルヒコ)」

「チェスト・惜しい!(黒子1)」

「石上大尉!追尾班がきます。ここは・・・包囲です。相手はただの子供です。逃げ出されたらたまったものじゃない!なるべくここは安全かつ迅速に・・・(黒子2)」

奥には何台もの真っ黒い装甲車、バイクが追いついてくる。さすがに地形を生かした追走劇(カーチェイス?)もここまでかな・・・・・

ガスマスクをつけた黒蟻のような防護班がふとい注射針のようなスプレーガン式の何か得体の知れないものをもってやってくる。それがほんと、ものすごく気色悪くて恐ろしかった。刺されるのか?!

やめろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

森林の中で絶叫がこだましたその時、近くにあった石の祠が奴らの攻撃の余波で、壊れてしまった。

ごろろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

奇怪にも、太陽が出ている爽やかの景色なのに、雷のような音が響く。

その時俺は人格を何者かに乗っ取られたような感じがした。俺でない俺になった気がしたのだ。

「部の民よ!去れ!」

わけのわからないことを言ってしまった瞬間に、天から晴れの天気のなかから謎の光が降り、

ドン!

連中のほとんどを燃やし尽くしてしまった。ほとんどの連中は苦しみながら消えた。

俺は恐ろしくなったが、奴らは紙切れになっていた。「これは、幻覚?形代だったのか・・・」

だが、頬を触ると痛いしきれて傷口もあったから、夢じゃない。

すると一部のメンバーがおかしくなって、「ご先祖様~!」といいながらおなじ隊員をアーミーナイフで

刺した。

じわぁあ

真っ赤な鮮血が出て、唖然とする黒子集団。

「うわあ!わ~~~~~!」一部の人間がおかしくなり、持っていた威嚇用の銃(ペイント弾か?)を撃ちはやし、一同は大混乱に陥ってしまう。「お、おちつけ!林!おいここは現場だぞ!ガキを逃しちまうだろーが!っクソが!(石上)」無理矢理一人の屈強な黒子がもうひとりの銃を乱射していた黒子に峰打ちし、もう一人が捕獲用のネットを投げかけてくる。

「かえったら診察の時間よ・・・!それとわたしと遊んでもらうからね・・・」

これが女性のいうことなら男性の多くは喜ぶものもいるのかもわからないが(俺はそうでもないが)、

明らかに声の主は

どー聞いても、聞き返してもむさくるしくへヴィーな男である。こいつの趣味は何なのだ。診察してあそぶってどういうことをするんだ?俺、どんな目にあっちゃうの?!ていうかネット苦しっ!おえっえ!

「大丈夫よ!私たちは敵じゃないから!あなたを安全なところへ連れてゆくだけだから。小一時間眠って、そして血液とか脊髄を貸して私たちの住まいで、新しい家だと思って暮らしてもらえたら済む話なのよ。(黒子3)」

ね、だいじょうぶだから・・・・・・・・・・・・・はやく来いよこの餓鬼ガぁああああ!

オカマ口調の男は一気に語気が荒くなり、ネットの口をロッキングしようとする。

すると、太陽が異様に動き出し、今まで以上にまぶしく輝いたような気がした。

「石上大尉!あれ・・・・・・・・・・あれは・・・・・・・・・」

太陽の光がこちらに向かってぶつかってきたかと思うと、強烈な熱気が体を包んだ。

「うそっ?!何度の熱だというの?!このネットは軍事用でも使用されていないほど特殊強化繊維でできているはず・・・私たちだけしか扱えない、私が開発した・・・・・・・・この餓鬼・・・・・・・・・なめてんじゃねぇぞお!(黒子3)」

ボーン!

強大な光とともに、一気にネットは砕け散り、山の半径20メートルがえぐり取られ、そこにいるほとんどの隊員が太陽の圧に弾き飛ばされて消滅した。

ジュわ~って網目がとけて、俺の体は真っ白に、一部が真っ赤に変化し輝いていた。それは激しく脈を打ち、新しい力がうまれている、その瞬間だった。

「これが、新しい力というのか・・・・・・・・!俺の、そうか、これが太陽の・・・・!(テルヒコ)」

「少年よ!私に人格を譲り渡せとあれだけ言ったであろうが!(謎の声)」

「す、すみません!私の魂をお使いください、神様・・・・・・・・・(テルヒコ)」

「なんなんだ・・・・・・・このガキ・・・・・・・・・・・・どうりで知りすぎてると思ったぜ(黒子1)」

「大丈夫ですか?おじさん。どうして俺を追いかけたんだ。(テルヒコ)」

「こちとら仕事だからな・・・・・・・・・自分の発言を忘れちゃいないだろ。ボウヤ。知られちまったらもう終わりだぃ。」その男は焔とともに燃え、そこには人形だけが残っていて、すべては火の粉になっていた。

「陰陽師らしいやり方だな。八咫烏の連中は本気でお前を狙っているというのはこういうことだ。テルヒコ、街へ行け!(謎の声)」

「やっぱり、あんたがいうとおりだったんだ・・・・・・・・・・・(テルヒコ)」

太陽の神、天照大神(あまてらすおおかみ)・・・・・・・・

天照大神、日本書紀および古事記、先代旧事本記などに登場する、日本の皇祖神である。

アマテラスとも呼び、時にアマテルともいうその神は、一般的には女性神といわれている。

だが、その正体は実のところ、「男だったのではないか・・・」といわれているのである。

俺の住む町の殿様が本来信仰していたこの山の神、饒速日(ニギハヤヒ)も

古来、天照国照彦火明饒速日命(あまてるくにてるひこほあかりにぎはやひのみこと)と

いうなっがーい称号で呼ばれ、アマテルの名を冠したという。

もっぱらなんでそんな知らなくてもいいような日常生活に不要極まりないことを知ってるかというのも、

俺は博物館でボランティアガイドをやってるから。もちろん趣味的な意味でやってる

というのもあるんだけれど、先祖が遠くたどると海部家といって、まさにこの神の家系図を持ってる人々で

俺の母さんが残してくれた多くの記憶や情報を手掛かりにそのことをメモ代わりにツイッターでつぶやいていたら(もちろんほとんど不用意なことをつぶやいたのじゃないけれど)

ある日、気持ちの悪い「京都皇統八咫烏連盟」という謎の集団のサイトに俺の文章が

丸丸アップされていたのである。

とはいっても俺は別に、古代史が好きなほら、自分で何か三流研究家にありがちのことのように

自分で編み出した説を信じ込んで

それを強く言うような感じのことはしてない。

当たり障りのない、日々起こったことだけを書いていたつもりだったのだが。

だがある日ふと、俺の知ってる母さんの母子手帳の内の話を

誕生日にツイッターとかに書いたことがあった。

身内の話題をつぶやいたのだが、それが載せられていたのである。どうしてそれが?!

ちょっと心外だったのを覚えている。だって、そういうのって、プライベートじゃないの。

さすがに興味を持たれただけなのか、いやがらせかな・・・

と思ったが、転載するなら一声ほしいものである。

ダメとは言わないけれど、するならいちおう、こちらに「あの、転載していいですか?」

と言ってほしいなあ。

そんなことをぶつぶつ言っていると、メールが届いた。そこにはこんな文章が

「おまえ、おもしろいやつだな。見られてるぜ?by裏天皇」

は???????新手の嫌がらせ?

「天皇の最近の動向は、俺が依頼したものだぜ?お前も気をつけたほうがいいよ。(その謎の人物のメール)」

俺としては裏天皇が何なのかわからなかったから、とにかく何を言うでもなく黙ってパソコンを閉じた。

それですべては終わった、はずだった・・・・・・・・・

噂では聞いていた。都市伝説評論家などが言っている京都にいる、陰陽師たちの話。

日本の政治・経済・文化・芸術・娯楽・軍事・警察、そして宮廷信仰のすべてをつかさどり

日本を裏ですべて操っているという闇の組織の存在を。

そう、今俺を追っかけているのが、もしかしたらそいつら絡みかもしれないということを・・・・・

存在しないと思っていたのに、まさか、するなんて・・・・・!

その神の力をめぐって、太陽の末裔を名乗る彼ら八咫烏の一味は俺を追ってくる。

それが秒速的に理解できた。

「ついにこの日が来たか・・・・・・・・・・・・・・来るべき日が来たということか。」

俺は、理解していた。だが、反射(カン)が理解していたのであって、俺という人間は理解していない。

だがなぜこの神のことを俺が完全に知っているのか、この事態を理解できていっているのか、俺には完璧に把握しきれていなかった。

無意識に俺は普段はならせない指をうまい具合に鳴らし、太陽の向こう側から真っ赤な戦闘機のような

赤い鳥が降臨してくる。

鳥のいる場所へはしって向かってゆくと、そこは矢研の滝だった。(神武天皇、天孫饒速日命が天の磐船でここへ降臨し、矢じりを研いだ滝といわれる。天の磐船とは神が乗った、空を飛ぶ岩の乗り物のことである。)

瀧の中から現れたのは、巨大な岩石だった。「天の磐舟(アメノイワフネ)に乗れ!テルヒコ(謎の声)」

一瞬で、鳥かごから真っ赤な鳥を出し、自由自在に世界中に使役している人間のイメージを思い出した。

な、なんだこの映像は・・・・・・・・・・・・

「乗るって、どうやって!あれは岩・・・・・・・・」

岩石に向かっていくと、一気に水しぶきとともに、岩は俺の眼前で爆裂四散するのだった。

その中から現れたのは焔の鳥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ではない。真っ赤な謎の姿をした、戦闘的な、優美な姿の乗り物(モーターサイクル)であった。

おれは県道へ出て、町へ急行した。

一刻も早く何とかしないと、みんな洗脳されちゃう!

なぜなら、おれは知っている。町にはマユが帰ってきていたからだった。

(つづく)