極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

神崎さんは前を向きながら、左手で器用に私の目を塞ぐ。

「……神崎さんの事情はわかりましたけど」

大きな左手を目の上からどけて、その、神崎さんが嫌だという目でじぃっと彼を見つめた。

「会う時間とか、話す時間がなくても、せめてメール一本くらいくれたって……」

『待っていろ』そのひと言をくれるだけで、私は彼を信じることができたのに。

神崎さんは運転をしながらも、ちらりと私を流し見る。

「……悪い。全部片付いた後、お前を迎えに行くって決めてた」

『決めてた』って、なんて勝手な。こういうときだけ、どうしてバカみたいにストイックなんだろう。

「そうならそうと、説明を……」

「それに、一度お前と連絡を取ったら、そのままずるずるいきそうで――」

大きくそびえ立つタワーマンションの前で、神崎さんはハンドルを切った。

地下駐車場に続く入り口を下って、太い柱の横の一角に車を止める。

「女にうつつを抜かして、仕事ひとつ片付けられない男なんて、格好悪いだろ?」