極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

神崎さんは手の甲を額に当て、沈痛な面持ちを浮かべた。

赤信号に停車すると、上を向いてだるそうに瞳を閉じる。

「学校で習った流行りのビジネス論だか経営手法だが知らないが、与えた資金で無茶苦茶やらかして大赤字、その上、派手にコケて顧客や株主の信頼も喪失。経営陣は弟を許すまいと排斥論を唱え始めた。この一年間、俺が奔走して弟の尻ぬぐいをすることで、なんとか丸く収めたんだ。弟を会社に残す代わりに、俺が社長になって舵を取るっていう条件つきで」

疲れ切った顔で神崎さんはシートにもたれる。

信号が赤から青に変わって、わずかに反応を遅らせながら、気だるく車を走らせた。

「お前以上に手間のかかる弟のせいで、この一年、色恋にうつつを抜かすこともできなかった。ってことで、いい加減その目をやめてくれないか?」

「……私の目はどんな風に見えているんですか?」

「穢れを知らない潤んだ瞳でキラキラ見つめられると、罪悪感に苛まれる」