「それって、『神崎コーポレーション』の――社長のお仕事ですか?」
「さすがに、その話は聞いていたか。そうだ。就任にあたって、内部的な事情があってな。いろいろと」
だいたい神崎さんは、説明が面倒くさくなってくると、「いろいろと、な」でごまかす。
また適当にあしらおうとしているな、この人……。
この一年、私をさんざん待たせて不安にさせたんだもの、説明してくれてもいいんじゃないだろうか。
じっと神崎さんを睨みつけると「わかったから、その目をやめろって」とたじろいだ。
「本当は、弟が会社を継ぐ予定だったんだ。学生時代から弟は経営に乗り気で、社長になるのが夢だった。対する俺は、後を継ぐことにたいして興味もなかったから、家のことは全部弟に譲ってやりたかったんだ。だから俺は、早めに家を出て、まったく違う会社に就職して、あえて弟とは違う道を選んで生きてきた。俺が放蕩息子を演じることで、両親も納得して弟を跡継ぎに据えることができた」
だが――と言葉を止めて、神崎さんはちっと舌打ちする。
「――俺が思っていた以上に、弟は経営者向きじゃなかったらしい」
「さすがに、その話は聞いていたか。そうだ。就任にあたって、内部的な事情があってな。いろいろと」
だいたい神崎さんは、説明が面倒くさくなってくると、「いろいろと、な」でごまかす。
また適当にあしらおうとしているな、この人……。
この一年、私をさんざん待たせて不安にさせたんだもの、説明してくれてもいいんじゃないだろうか。
じっと神崎さんを睨みつけると「わかったから、その目をやめろって」とたじろいだ。
「本当は、弟が会社を継ぐ予定だったんだ。学生時代から弟は経営に乗り気で、社長になるのが夢だった。対する俺は、後を継ぐことにたいして興味もなかったから、家のことは全部弟に譲ってやりたかったんだ。だから俺は、早めに家を出て、まったく違う会社に就職して、あえて弟とは違う道を選んで生きてきた。俺が放蕩息子を演じることで、両親も納得して弟を跡継ぎに据えることができた」
だが――と言葉を止めて、神崎さんはちっと舌打ちする。
「――俺が思っていた以上に、弟は経営者向きじゃなかったらしい」



