極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

「誤解だ。確かにそんな話もあるにはあった。見合いの勧めとか。だが、俺が会ったこともない初対面の女とほいほい結婚するような男に見えるか?」

……確かに。神崎さんならお見合いなんて、のらりくらり交わして逃げ出してしまいそうだ。

納得できないことはやらない、そんな頑固な性格でもあるから。

領収書の清算ですら、「俺の時間はこんなことに費やすためにあるんじゃない。もっと実のある仕事を持ってこい」とかなんとかごまかして逃げ出した挙句、代わりに全部私がやることになったんだから。

嫌な記憶まで思い出してしまって、じとっと神崎さんを睨みつけると。

「そんな顔するなよ。本当に忙しかったんだ、この一年。遊んでたわけじゃないぞ、仕事だ仕事」

苦虫をかみ潰したような顔で弁解して、強めにアクセルを踏む。

どうやら婚約者がいるから私を迎えにこなかったわけじゃないらしい。

私がどれだけショックを受けたか。これじゃあ傷つき損じゃないか。

それにしても、一年間、まったく手を離せないほど忙しい仕事って……。