極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

「その涙の理由は、着いたらゆっくり聞いてやる」

くしゃ、と私の頭をひと撫でした後、神崎さんはシートベルトを締めアクセルを踏み込んだ。

ぐん、と重力を感じて、背中がシートに押しつけられる。

街路樹の影がびゅんとうしろへ流れていき、逢沢さんの姿も瞬く間に遠くなった。

「うしろ髪、引かれるか?」

そんなことを聞くのは、いつまでも逢沢さんの姿を目で追いかけていたからだろうか。

「正直、お前の心が逢沢に向いているとは、思わなかった」

ハッとして運転席を見ると、彼は真っ直ぐ前を見据えたまま、厳しく唇を引き結んでいた。

「仕方がない、か。悪い。一年も待たせて」

赤信号、窓枠に肘をついて、私から顔を背けるように窓の外を眺める。

もしかして……後悔、しているの? 一年間、なんの連絡もよこさず、私を放っておいたことを……。