「まったく。いつになっても、手間がかかるな、お前は」
神崎さんらしい、独善的な笑み。胸が疼いて、ぎゅっと胸元を掴む。
どうして彼はいつだって自信に満ちあふれていて、余裕の顔をしているのだろう。
私は彼のことをもう忘れたと言ったはずなのに。
私が神崎さんに未練を残しているのを、全部知った上での行動に思える。まぁ、事実なのだけれど。
神崎さんは、私を抱きかかえたまま、マンションの出口へと向かった。
マンションの斜め前、街路樹と植え込みに沿うように止めていた、真っ黒なセダンの助手席に私を放り込む。
「大人しくしてろ」
そう言い放って助手席を閉めると、ぐるりと反対側に回って運転席へ乗り込む。
「シートベルト、締めろよ」
彼が私の左上にあるシートベルトに手を伸ばす。その動きに反応して私が左に顔を向けたとき。
「あ……」
窓の外、マンションの入り口に、逢沢さんが険しい表情で立ち尽くしているのを見つけてしまい、思わず私は声を漏らした。
神崎さんらしい、独善的な笑み。胸が疼いて、ぎゅっと胸元を掴む。
どうして彼はいつだって自信に満ちあふれていて、余裕の顔をしているのだろう。
私は彼のことをもう忘れたと言ったはずなのに。
私が神崎さんに未練を残しているのを、全部知った上での行動に思える。まぁ、事実なのだけれど。
神崎さんは、私を抱きかかえたまま、マンションの出口へと向かった。
マンションの斜め前、街路樹と植え込みに沿うように止めていた、真っ黒なセダンの助手席に私を放り込む。
「大人しくしてろ」
そう言い放って助手席を閉めると、ぐるりと反対側に回って運転席へ乗り込む。
「シートベルト、締めろよ」
彼が私の左上にあるシートベルトに手を伸ばす。その動きに反応して私が左に顔を向けたとき。
「あ……」
窓の外、マンションの入り口に、逢沢さんが険しい表情で立ち尽くしているのを見つけてしまい、思わず私は声を漏らした。



