極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

「まさか……これを返しにわざわざ……」

「は? なにとぼけたこと言ってんだ」

神崎さんは立ち上がると、私の前までやってきて膝をついた。

呆然とする私の顎に指を添えて持ち上げ、精悍な顔を近づける。

「待ってろって、言ったろ? お前を迎えにきたんだ」

意思の強い瞳が私を射抜く。

ああ、同じだ。その力ある眼差しも口調も、一年前からなにも変わっていない。

彼は強く、凛々しく、頼もしく、私が愛したあの日となにも変わらずそこにいる。

長い間待ち続けた私を、とうとう迎えにきてくれたんだ。あの約束は、嘘じゃなかったんだ。

――けれど。

……どうしてなの?

待ち焦がれていた瞬間が、今、まさにやって来たというのに、私は信じることができず目の前の光景を疑っていた。

なぜ? 私は捨てられたんじゃなかったの?

だって、神崎さんは、良家の子女と結婚するんでしょう? どうして私のもとに戻ってくるの?