デスクについて、ひと息つく間もなく慌ただしく仕事を開始した。

メールチェックと全体の進捗確認、顧客からの問い合わせ対応に、今週の納品の準備。

やることが山ほどすぎて、集中している間は余計なことを考えなくて済んだ。仕事が私の心を安定さてくれる。

もしかして、とはたと気がついて、キーボードを叩く手を止めた。

――神崎さんは、こうなることがわかっていて、私にこんなにたくさんの仕事を残したの?

ズキン、と胸の奥が痛んだ。最初から、私のことを迎えにくるつもりなんて……。

――いけない。また考えが脱線してる。

もう一度大きく深呼吸して仕事に集中した。

考えたってわからない。結局、彼は一年経っても私のことを迎えに来てはくれなかった。

いい加減、忘れなくちゃ。あの恋は、とっくの昔に終わってたんだ。

現実を、受け入れよう。そう自分に言い聞かせて、ヒリヒリする胸の内に蓋をした。