それから一年、神崎さんの事務作業をひたすら請け負った。

営業部のくせにひとりだけ社内に残って、ひたすらパソコンと向き合った。

気がつけば神崎さんの仕事だけでなく、他の先輩や同僚の事務作業も手伝うことになり、それはそれで重宝してもらえたらしい。

最初はひとりだけ特別扱いされている負い目があったけれど、いつの間にか周りが文書作成のプロフェッショナルとして私を頼ってくれたから、自分の仕事に誇りを持つことができた。

その後、私が〝退職届〟を書くことはなかった。

翌年から、ちょっとずつだけれど、商談に戻らせてもらった。

一年経つ頃には、普通に営業として仕事を任せてもらえるまでになった。

けれど、きっとあのくすぶった一年がなければ、今の私はなかったと思う。

結局神崎さんには、助けられてばかりだった。