オフィスの端にあるコピー機の前で、いつもと違うオフィスを眺めながら痛む頭を押さえていると。

「……大丈夫？」

突然、脇からかけられた声にびくりとして、慌てて表情を引き締めた。

立っていたのは、神崎さんの同期であり、後任として課長に就任した逢沢さんだ。

「逢沢さん！　す、すみません、ぼうっとして」

「二日酔い？　昨晩、だいぶ飲んでたでしょう」

そう言って、逢沢さんは線の細いシルバーフレームの眼鏡の奥の瞳を淑やかに細め、苦笑した。

切れ長の瞳、薄い唇、真っ白な肌、表情の乏しい顔つき――一見、冷徹そうに見える彼だが、その実、話し込んでみると驚くほど柔和で優しい人だ。

笑顔は女神のように慈愛に満ちていて美しい。

仕事中の冷たい表情と笑顔のギャップに落ちる女性社員が続出し、今や社内の人気ナンバーワンだ。

神崎さんが退職したおかげで、二分していた女性人気も彼に集約するだろう。

そんな逢沢さんが、今日から私の直属の上司となる。