「……咲島さん。正直に打ち明けると、君への興味は神崎への反抗心みたいなものだったんだ」

逢沢さんは、おもむろに玄関の縁に手をかけ、半開きのドアにもたれた。

「……反抗心?」

私はシューズラックの前で足を止め、彼の突然の告白に困惑する。

彼は肯定するように黙ってうつむくと、ぽつりぽつりと語り始めた。

「神崎とは、ずっとライバル関係だったせいか、彼のやり方も、性格も、なにもかも嫌いで腹立たしかった。ライバルといっても、彼は全部俺の一歩先を行っていて、先に昇進したのも彼の方だった。俺は彼に、なにひとつ敵わなかった。……恋人を奪われたこともある」

私から目を逸らす逢沢さんは、まるで懺悔でもしているかのようだった。

静かに語りながら、おもむろに玄関に体を滑り込ませ、バタン、とドアを閉めた。