極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

役員用のフロアだからだろうか、私たちの他に人通りはなく、誰もいない廊下にふたり分のコツコツという靴音だけが響いた。

気まずい……そう感じ、ギュッとバッグの持ち手を握りしめる。

あんな場面を見られてしまったのだ、世間話をふれるような雰囲気でもない。

困惑していると、水上さんの方から口を開いた。

「……あなた、神崎くんの後輩なんですってね。私も昔、『アストロ』で務めていたのよ」

ドキリとして一瞬返答に悩む。「ぞ、存じております」恐る恐る頷くと、「え!? ごめんなさい……お話したことあったかしら」今度は彼女の方が困惑した。

「いえ、直接面識はありませんが、水上さんは有名だったので……」

恐る恐る切り出すと、彼女ははつらつとした顔でニコッと笑った。

「知っていてくれたのね。ありがとう。……じゃあ、私も先輩としてあなたに指導する権利があるわけね」

そう前置きすると、眉をきりりと跳ね上げて、真剣な顔つきになる。