極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~

……神崎さんが、私に鍵を渡していいって思ってくれたのは、事実だよね。

なんとか自分を奮い立たせて、神崎さんのマンションへの道のりを歩き出す。

ひとりで帰る、神崎さんの家。朝来たばかりだけれど、まるで見知らぬ迷宮に迷い込んだような不安感に襲われる。

受付のコンシェルジュの前を通りすぎるときも、エレベータの三十階のボタンを押すときも、ドアの鍵穴に鍵を差し込むときも、ひとつひとつが緊張してドキドキする。

家の中は、恐ろしいほど広くて静かだった。

けっしてお化けなんて信じるタイプではないけれど、なにか得体のしれないものが潜んでいそうで背筋がぞくぞくと寒くなる。

広い家って、どうしてこうも不気味なのだろう。

早く神崎さん、帰ってきてくれないかな。

使い勝手になれるまで、キッチンには立たなくていいと言われている。

それから、俺を待たずに食事を済ませておいてくれ、とも。

俺は帰るのが何時になるかわからないし、連絡を入れることもできないかもしれないから、と。