「じゃあ、既存案件はどうするんです?」

「咲島さんが一年かけて少しずつ手順書を整えてきてくれたおかげで、無理なく引き継げる状態にはなっているからね。既存案件は後任に任せて、君には新規案件の旗振りでもまかせようかな」

「は、旗振り!?」

おもわず食事の手を止めた。

旗振り――つまり、現場の指揮、監督ってことだ。主任とか、もっと上の主査とか、マネージャーのお仕事である。

どうして私が? ポカンと口を開けていると、逢沢さんは苦笑いを浮かべながら、困ったように首を傾げた。

「まぁ、俺も驚いたんだけど、それが上の意向らしくて。もしかしたら、この一年頑張ってきたことで出世コースに乗ったのかもしれないよ」

「わ、私がですが!?」

思わず耳を疑ってしまう。同期の中でも一番出世と遠かった私が出世コースだなんて、にわかに信じがたい。

「俺としては、あまり君にばかり負担をかけたくないんだけどね。去年も随分無理をさせてしまったし」

ふう、と逢沢さんは箸を置いて、軽くため息をもらして窓の外を眺めた。